EASY GUIDE ─ 対話でわかる
話すだけで、仕事が終わる。
─ 「キーボードレス」な現場と音声AI
モスバーガーのAIドライブスルー、東京ガスのコールセンター。
PCを使わない現場で、いま何が起きているのか。
みらい
質問する人
はかせ
解説する人
みらい最近「音声AI」ってよく聞くけど、Siriとかとどう違うの?
はかせ大きく違うよ。今の音声AIは、人と同じテンポで“会話が続けられる”ようになったんだ。
みらい会話が続く?
はかせうん。前の発言を覚えていて、言い直しや割り込みにもちゃんと対応できる。
ナレーション・補足従来の音声認識は「決まった言葉を聞き取る」レベルにとどまっていました。近年のモデルは文脈を保ちながら数十ターンの対話を成立させ、途中の訂正や割り込みにもリアルタイムで反応できます。
みらいそれって、何が変わるの?
はかせキーボードのない“現場”が、はじめてDXの対象になるんだ。
みらい現場……お店とか、電話の窓口とか?
はかせそう。今その現場で、実際に動き出している事例が出てきているよ。
なぜ現場のDXは進まなかったの?
みらいそもそも、なんで現場だけ後回しだったの?
はかせこれまでのDXは、全部「PCの前に座る人」を前提にしていたからだよ。
みらいあ……レジに立つ人とか、運転してる人とか。
はかせそう。キーボードに触る時間がほぼゼロの仕事は、入力する手段そのものが無かったんだ。
ナレーション・補足チャットツール、SFA、生成AIによる文書作成──いずれもデスクワーク前提の改革でした。一方で日本の労働人口の多くは、店頭・車内・電話口・工事現場といった「非デスク」の現場で働いています。
みらいじゃあタブレットを配ればいいんじゃない?
はかせそれが落とし穴でね。現場の人に“もう一つの入力作業”を背負わせるだけだったんだ。
みらいたしかに、忙しいのに操作が増えたら本末転倒だ。
はかせだから今、入力インターフェースごと無くす発想が注目されているんだよ。
事例①:モスバーガーの「AIドライブスルー」
みらい具体的な事例ってあるの?
はかせモスフードサービスが、ドライブスルーの注文受付にAIを入れる実証実験を始めたよ。
みらいいつから?
はかせ2026年1月21日から、埼玉のモスバーガー吉川美南店でスタートしたんだ。
ナレーション・補足株式会社New Innovationsが開発した音声対話AI「AI Order Thru」を活用。2026年度中には合計5店舗程度まで実験を拡大する計画が公表されています。
みらいAIが全部注文を取っちゃうの?
はかせいや、そこが面白いところ。AIと店舗スタッフの“ハイブリッド応対”なんだ。
みらいハイブリッド?
はかせAIが一次受注を担当して、必要なときだけスタッフがフォローに入る設計だよ。
みらいなんで完全自動にしないの?
はかせ音声認識は100%じゃない。それを前提に、接客品質を落とさない仕組みにしているんだ。
ナレーション・補足プレスリリースでは、AIを「人の代替」ではなく「ブランド体験を拡張する存在」と位置づけています。将来的にはカロリー指定での提案や、キャンペーンキャラクターによる応答なども検証予定とされています。
みらいたしかに、ドライブスルーって手が塞がってるもんね。
はかせそう。運転しながら注文を完結させる、いわば“究極のキーボードレス接点”なんだ。
事例②:東京ガスのコールセンター
みらい接客以外だとどんな例があるの?
はかせ東京ガスのコールセンターが、音声AIで応対を大きく効率化しているよ。
みらいどんな仕組み?
はかせオペレーターの会話をAIがリアルタイムで解析して、推奨回答を画面に自動表示するんだ。
みらい検索しなくていいってこと?
はかせそう。以前は会話を聞きながら手で検索していた作業が、まるごと不要になったんだ。
ナレーション・補足この取り組みにより、年間で約11,000時間の応対時間削減、エスカレーション率14%削減、応答時間の平均10秒短縮といった成果が報告されています。
みらいすごい数字だね……。自動応答もやってるの?
はかせうん。ガスの開閉栓受付では、対話AI「CAT.AI」で受付そのものを自動化しているよ。
みらい電話だけで住所とか名前を正確に伝えるの、難しくない?
はかせいい着眼点。だから音声とテキストを組み合わせているんだ。
ナレーション・補足採用されたのは音声とテキストを併用する「CXマルチモードAI」。電話中にショートメッセージを開いて住所を入力するなど、聞き取りづらい情報を確実に取得する設計により、2024年3月の繁忙期にはAIのみでの対応完了率が最大96%に達しました。
みらい96%! ほとんど人が出なくていいってこと?
はかせ繁忙期のピークをAIが吸収してくれる。それが一番大きい価値なんだ。
みらいでもコールセンターって、もうPC使ってるよね?
はかせ鋭いね。でも本当の負荷は“聞きながら、考えながら、手で入力する”ことだったんだ。
みらいあー、手が塞がってるのは同じか。
はかせそう。人の手を介した情報処理を無くす。これも広い意味のキーボードレス化だよ。
2つの事例を並べてみると
みらい業種が全然違うのに、似てる気がする。
はかせその通り。並べると設計思想の共通点がはっきり見えるよ。
| 項目 | モスフードサービス | 東京ガス |
|---|---|---|
| 対象の現場 | ドライブスルーの注文受付 | コールセンターの応対・受付 |
| AIの役割 | 一次受注を音声AIが担当 | 会話解析・回答提示/受付の自動完結 |
| 人の役割 | スタッフが必要時にフォロー | 複雑な判断・例外対応を担当 |
| 導入の進め方 | まず1店舗、年度内に5店舗程度へ | ガス開閉栓など特定業務から段階展開 |
| 成果・狙い | 接客品質を守りながら省人化 | 年間約11,000時間削減/AI完了率最大96% |
みらいどっちも「AIに全部任せる」じゃないんだね。
はかせそこが肝心。AIは“全自動化の道具”じゃなく“負荷を減らす道具”として置かれているんだ。
みらい人が残る部分って何?
はかせ現場には「絶対に外せない一言」がある。その最後の砦は人間が担うんだよ。
みらい進め方も似てるね。いきなり全店じゃない。
はかせうん。業務を分解して、AIが得意なところから段階的に置き換える。これが現実解なんだ。
自社で考えるなら、どこから?
みらいうちの現場でもできるかな?
はかせまずは「毎日、同じことを口頭で繰り返している業務」を探すといいよ。
みらいたとえば?
はかせ注文の受付、予約変更、住所や名前の確認、定型の一次問い合わせ。この辺は相性が抜群だね。
ナレーション・補足判断基準はシンプルです。①発話の内容が定型的である ②繁忙期に処理量が跳ね上がる ③現場の人の手が物理的に塞がっている。この3つが重なる業務ほど、音声AIの費用対効果は高くなります。
みらい逆に向いてないのは?
はかせクレーム対応や、例外的な交渉。感情の機微が要る仕事は人が持つべきだよ。
みらい最初から完璧を目指さなくていいんだね。
はかせそう。1拠点・1業務で始めて、数字で確かめてから広げる。それが遠回りに見えて一番早いんだ。
これから現場はどう変わる?
みらいこの流れって、他の業界にも広がるの?
はかせ広がると思う。PCを持たずに働く現場は、まだ無数にあるからね。
みらいたとえば?
はかせ自治体の窓口、物流、医療、建設。どこも「話す」が中心の仕事だよ。
ナレーション・補足外食とインフラという異なる業種で先行事例が生まれていること自体が、この変化が特定業界に閉じないことを示しています。同じロジックはあらゆる非デスクワーク領域に展開可能です。
みらい現場の人は、新しく何かを覚えなきゃいけない?
はかせそこが本質的な良さでね。これまで通り「話す」だけでいいんだ。
みらい操作を覚えなくていいDX……はじめて聞いたかも。
はかせ入力インターフェースを増やすんじゃなく、無くす。それが今回の変化の正体だよ。
まとめ
みらい結局、今なにが起きてるの? 一言でいうと。
はかせ「デジタル化=画面を触ること」という前提が、崩れ始めているんだ。
みらい話すだけで、仕事が終わる。
はかせそう。注文が通り、手続きが完了する。現場の人は自然な行為を続けるだけでいい。
みらいでも、人がいらなくなるわけじゃないんだよね。
はかせうん。人は“作業する人”から、“最後の質を守る人”に変わっていくんだ。
みらいよし、うちの現場でも「毎日繰り返してる会話」を洗い出してみる!
はかせいい第一歩だね。そこにこそ、次の自動化の余地が眠っているよ。
参考情報
─ おわり ─


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